応用生物学科blog
2008年08月18日 食品とバイオテクノロジー (7)
月曜日担当の中島です。
『食品とバイオテクノロジー』 シリーズも7回目となりました。このシリーズがいつまで続くのか・・・ というより自分の知識の限界に近づきつつあり、いつまで続けられるのか自分でも分からない状況です。
と、冒頭から不安を垣間見せるような書き出しをしておいて、今回は醤油の種類について説明させていただきます。醤油の作り方については、前回の書き込みをご覧になってください。
醤油は基本的に5種類に分類されますので、それぞれを簡単に説明いたします。
濃口醤油(こいくちしょうゆ)
全国の醤油消費量の80%を超える、もっともポピュラーな醤油です。関東以北の地域では90%以上が濃口醤油ですので、醤油=濃口といっても過言ではありません。日本の南側では濃口醤油の比率が下がるのですが、それでもどこの地域でも70%前後は濃口醤油のようです。ただし、九州地方では同じ濃口醤油といっても、関東以北のものに比べると非情に甘い味をしています。東京人の中島は以前九州に旅行したときに、醤油があまりにも甘いのでびっくりした経験があります。
淡口醤油(うすくちしょうゆ)
濃口醤油に比べて、色や香りを抑えるように作られた醤油です。製造過程において濃口醤油よりも食塩水を多く使用していますので、うすくちといっても塩分控えめではありません。醤油の色や香りを抑えて、野菜など素材本来の持ち味を活かす関西料理などで多く使用されています。
溜まり醤油(たまりしょうゆ)
主に中部地域で作られる醤油で、濃口醤油・薄口醤油は原材料の大豆と小麦がほぼ同量の割合で作りますが、溜まり醤油は大豆を主原料とし小麦はわずかな割合しか使用しません。大豆と少量の小麦に麹(こうじ)を入れて「味噌玉麹(みそだまこうじ)」を作り、これに食塩水を加えて仕込み、これからしみ出す液を何回も汲みだしては注ぎかけて熟成させることで、とろみ・濃厚な旨味・濃い色・芳醇な香りが作り出されます。刺身用の醤油として使用されたり、煮物・照り焼き・蒲焼きなどに使用されています。
白醤油(しろしょうゆ)
溜まり醤油とは逆に、小麦を主原料とし大豆はわずかな割合しか使用しないで作られる醤油です。薄口醤油よりもさらに色や香りが抑えられていますが、甘みは強めです。
再仕込み醤油(さいしこみしょうゆ)
製造過程において、食塩水の代わりに醤油を使用して作られます。単なる食塩水ではなく旨味や香りの成分を含んだ醤油を使用して仕込むのですから、旨味・色・香りともに濃厚な醤油ができあがります。山陰地方から九州の一部で作られており、おもに刺身などのつけ醤油に使用されています。
以上が代表的な5種類の分類です。それにしても、大豆・小麦・麹・食塩という4種類の原材料によって作られる醤油ですが、原材料の分量や発酵・熟成過程の条件の違いによって、多彩な醤油ができるものですね。顕微鏡や分析技術のない古来から、微生物の働きを応用して多彩な醤油や味噌を作り出してきた人間の技術はすばらしいと思います。
醤油の分類としては、上記の他にも塩分を控えた減塩醤油や、出汁(ダシ)成分を含んだだし醤油やこんぶ醤油など、さまざまな種類の醤油が市販されています。下の画像は我が家の近くにあるスーパーの醤油売り場ですが、実にたくさんの種類の醤油がならんでいるものですね。
我が家は東京の下町にあるのですが、このスーパーでも白醤油(広島産)や、溜まり醤油(愛知県産)がちゃんと売られていました。また変わったものとしては、玉子かけご飯専用醤油というものまで売られていました。
ところで、麹(こうじ)と手前味噌のときに触れられていただいた、米麹(こめこうじ)も醤油コーナーのすぐそばに置かれていましたので、ついでに撮影してきました。
「みやここうじ」の伊勢惣さん←リンク
この米麹を発売しているメーカーさんのホームページには、甘酒や手前味噌の作り方を詳しく紹介していますので、興味がある方はご覧になってください(画像の横にリンクを張っておきました)。
学生さんの夏休みも、残すところ2週間となってしまいました。暑い日が続いていますが、夏バテしないように気をつけて楽しい思い出をたくさん作れると良いですね。
※ 検索エンジン等でこのページに直接来られた方は、下記のリンク先に食品と
バイオテクノロジー、カビ・酵母・細菌についての索引的ページを設けましたので、
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2008年08月11日 食品とバイオテクノロジー (6)
月曜日担当の中島です。
『食品とバイオテクノロジー』 シリーズの6回目です。
このシリーズがいつまで続くのかは未定で、楽しそうなシリーズテーマが見つかればすぐにそちらに転向してしまうかも知れませんが、今のところは次のテーマは見つかっていません。
さて、今回は醤油(ショウユ)について、簡単に説明させていただきます。
海外旅行などで日本食がしばらく食べられなかったりすると、「お味噌汁が食べた〜い!」と言い出す人がいるようですが、中島の場合はお味噌汁より醤油味が恋しくなってしまう醤油派です。ちなみに、こういった“子どもころから慣れ親しんできて、どうしても食べたくなる食品”のことをソウルフード(Soul Food/魂の食べ物)といったりすることがありますよね。皆さんのソウルフードは何ですか?
麹(コウジ)と手前味噌のときにも触れましたが、醤油は味噌に比べて作り方が複雑で、なおかつ長い製造期間が必要となります。ということで、醤油がどうやって作られているのか、細かい部分を大幅に省略して簡単に説明させていただくことにします。なお、醤油も味噌と同様に日本国内でいろいろな種類のものが作られていますので、今回は代表的な「本醸造方式」について説明いたします。
醤油の主たる原料は大豆、小麦、食塩、麹(コウジ)です。
まず大豆は水に漬けて柔らかくし、それを蒸します。
同じく小麦は焙煎(イルこと)し、それを細かく粉砕します。
この大豆と小麦をほぼ同量混ぜ合わせ、そこに麹を加えて数日間麹菌が繁殖しやすい条件下に置きます。
この状態で麹菌が繁殖したものは醤油麹と呼ばれ、これに食塩水を加えたものは諸味(モロミ)と呼ばれます。
この諸味を時折攪拌(かき混ぜること)しながら貯蔵すると、諸味の中で微生物(乳酸菌・酵母)による発酵が起こり、独特の旨味(ウマミ)や色、香りが作られるのです。
およそ半年から1年程度貯蔵されて熟成されたものを圧搾(アッサク/オシシボルこと)し、しぼり出したエキスを生醤油(なまショウユ)といます。生醤油のままでは微生物による発酵がさらに進んでしまいますので、加熱することで微生物による発酵を止めて、やっと醤油の完成となります。
「簡単に説明する」などといいましたが、やはり言葉で醤油の製造過程を説明するは難しいですね。
下記の日本醤油協会のページでは、醤油について非常に詳しく説明していますので、興味のある方はぜひご覧になってください。製造の過程についても、分かりやすいブロック図等で説明しています。
そういえば、一重まぶたの純日本ふうの顔立ちを、ショウユ顔と呼んだりしますから、やはり醤油=日本というイメージなんでしょうね。
中島はこげた醤油の匂いが大好きです。夏なら焼きトウモロコシに醤油、冬なら焼いたお餅に醤油、香ばしく焼けたお煎餅も良いですよね。
小林さんがBBQレポートを書き込んでくれましたが、炭火で野菜などを焼くときにも上から醤油をかけて、ジュジューっといわせて軽くこげたところで食べると最高ですね
さて、下の画像は今回のテーマである醤油とは何の関係もありませんが、出張先で見つけたご当地カップ麺の第3弾、「大阪名物甘くて辛いカレーうどん」です。ちゃんとリサーチしたわけではありませんので、これが大阪以外の地域で売られていないのかどうかは分かりませんが、大阪に出張したときにコンビニで見つけて思わず購入してしまいました。決して、こういったものを探すことが目的で出張しているわけではありませんし、カップ麺フリークでもありません。出張における、ちょっとした楽しみのようなものです。
味は、やはり甘くて辛かったです・・・・
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2008年08月07日 白いネコはなぜ白い?
さてさて、今日はネコの遺伝についてでした(何度も言いますが野崎の専門は植物)。
と言っても正確にはネコの毛色の遺伝について、です。
その前に「メンデルの法則」についておさらいをしておきましょう。応用生物学というかバイオテクノロジーの基礎となる理論です。
メンデルの法則は以下の3つの法則から成り立ちます。
(1)優性の法則:劣性遺伝子が優性遺伝子の影響で発現しないこと。
このため、親の形質のうち、優性の形質のみが
子に現れる。
(2)分離の法則:(1)に従って生まれた第1世代同士を交配させること
によって、第1世代では表れなかった劣性の形質が
第2世代に現れること。
(3)独立の法則:(1)、(2)に従う遺伝子の他にも、形質に関わる遺伝
子が存在する場合、遺伝子はそれぞれ独立し、
子に受け継がれること。
ここで重要になってくるのがゲノムと倍数性の概念ですが、ここでは「ほとんどの生き物は生存に必要な遺伝子を2セット持っている」と考えましょう。で、子供はそのうちの1セットずつを両親からもらって2セット持つことになります。
前回のアルビノを例にすると、アルビノはチロシナーゼ遺伝子が壊れているのでメラニンが合成できない個体でしたね。ということはアルビノと野生型(アルビノ遺伝子を持たないとしましょう)の子供はアルビノの親から壊れたチロシナーゼ遺伝子入りセットをもらい、野生型の親から正常チロシナーゼ遺伝子入りセットをもらうことになります。この場合、子供はちゃんと働くチロシナーゼを一つは持っているので、メラニンが合成されます。つまり、アルビノは劣性変異ということです。
さて、ここでやっとネコちゃん登場です。白ネコはたくさんいますがアルビノを見た人はほとんどいないでしょう。ほとんどの白ネコは白化個体ということですね。この遺伝子はWと表記される優性遺伝子で、対立遺伝子は全ての有色遺伝子になります。毛が白いということはメラニンがないということですが、もしメラニン合成ができなくなるような壊れた遺伝子を持っているようなら、アルビノと同様に劣性形質のはずです。どういうことなのでしょう?
実は白ネコにはメラニンを合成できる細胞(メラノサイト)が無いようです。同じように優性変異には白斑(S)もあるのですが(白相手だと劣性)、この白斑もメラノサイトが無いために白くなっています。メラノサイトは胎児期に増殖と移動をし、全身の皮膚に分布するようになるわけですが、この増殖と移動を指示するシステムに異常が起きているのがこれらの変異です。マウスの同様な変異では指示を受ける「レセプター」と呼ばれるタンパク質に異常が起こっていることが知られています。このレセプターは2個がくっついて働くのですが、異常タンパク質どうしでくっつくだけでなく、正常タンパク質と異常タンパク質がくっついても働かないために、両方の遺伝子をヘテロで持つと正常な組み合わせのレセプターが4分の1になってしまい、増殖と移動を指示するには数が足りなくなると説明されています。おそらく、ネコでも同様のシステムが働いていると考えられます。
というわけで、Wを持つネコはメラノサイトが移動できず、皮膚中に無いので白くなるということになります。Sを持つネコは(Wを持たない限り)メラノサイトが途中までしか移動せず、白い部分ができる事になります(ホモのほうが白い部分が大きくなる)。つまり、これらの遺伝子が他の毛色遺伝子よりも優性(というか上位)にある理由は、他の毛色遺伝子はメラノサイトで働く遺伝子なのにWとSはそのメラノサイト自体を無くしてしまうから、ということです。
ところで、メラノサイトは神経冠細胞という細胞由来なので、白や斑の変異個体は同じ神経冠細胞由来の組織に異常を持つ事があります。白ネコの場合には目がブルーになるとか難聴になるケースもあります。
ネコの遺伝の話は尽きないのですが、長くなるので次回に。次回は「ccはどうして三毛ネコじゃなかったのか?」ライオニゼーションについてです。
今日の一冊
ネコと遺伝学 (新コロナシリーズ): 仁川 純一
ネコの遺伝ということなので、これで。ホントはネコの毛並み―毛色多型と分布 (ポピュラー・サイエンス)のほうが好みなんだが・・・でも既に入手困難なので。
最近はこの手の情報はネット上で充実しているので、あえて本を読む必要はないという人もいるかもしれませんが、ネット情報は実用上の情報に限定されるケースが多いこと、孫引きを繰り返して解釈がおかしいケースも多いことなどの問題もあるので(コピペ作成レポートがダメな理由)、できるかぎり信頼の置ける出版物(1次情報に相当するもの)は読んでおくべきです。もちろん出版物自体が2次情報という場合もありますが、それでも3次情報よりはノイズが少ないはずです。特にどうしても必要な情報を探す場合には1次情報を探し出して当たるようにしましょう。
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2008年08月04日 *BBQ*
先日、応用生物学科の2年生と一緒に河原でバーベキューを行いました☆
このバーベキューは学生さんが企画してくれたもので、今回で2回目になります。
昨年よりも参加者が増えて、今年はクラスの半分ぐらいの学生さんが参加しました!
応用生物学科の2年生は自主的にこういった企画を立てるのが好きみたいですね(^_^)
当たり前ですが、2年生にとっては最後の夏休みになるわけで・・
ひと夏の思い出として、みんなの心に刻まれたことでしょう♪
まずは火おこしから
汗だくになって頑張ってます!
海パンをはいて気合十分☆
でもこの川では泳げないですよ(゚∀゚)アヒャヒャ
お肉が焼けた
おやつもありま〜す
いざ勝負
どっちが勝つかな〜
ダリャー(ノ`Д´)ノ
YOU WIN
僕の趣味は釣りなんだな〜
キャッチ・アンド・リリース
そして最後はみんなでお片付け。
ゴミは分別して持ち帰りました
この日も連日同様とっても暑かったのですが、みんな元気にはしゃいでおりました。
早いもので、夏休みも残すところあと半分。。とちょっと。笑))
1年生も2年生も、夏の思い出をたくさん作ってくださいね
(私も夏をエンジョイするぞ♪@こばやし)
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2008年08月04日 食品とバイオテクノロジー (5)
月曜日担当の中島です。
『食品とバイオテクノロジー』シリーズも、いよいよ5回目となりました。今回は麹(コウジ)と手前味噌についてです。
前回・前々回の説明で味噌作りに麹(コウジ)が欠かせないものであることは、お判りいただけたと思います。我々日本人の食生活において、麹を使用して作られる発酵食品は欠かせないものになっています。
どのような発酵食品があるのかといいますと、代表的なものとしては味噌、醤油(ショウユ)、日本酒、食酢、味醂(ミリン)、焼酎(ショウチュウ)などがあり、この他にも麹を使用した漬物や、これも漬物の一種と分類されるのかもしれませんがイカの塩辛(シオカラ)などに麹をいれる場合もあります。イカの塩辛にお米の粒のようなものが入っているのに、気がついたことはありませんか?
ご存知の方もいると思いますが、麹(米麹)はスパーマーケットなどでも入手することが可能なのです。どこのスーパーマーケットでもというわけにはいかないと思いますし、シーズンによっても売られている場合と売られていない場合があるようですが、何ヶ所かで尋ねていただければ見つかるのではないかと思います。また、ネットで販売している業者さんもあるようですので、とにかく一般の人でも入手可能なことは確かです。
さて、麹を入手してどうするのかといいますと、家庭でも簡単に作れる麹を使用した発酵食品として甘酒と味噌の製作をお勧めします。ちなみに、醤油は製造に長い日数と本格的な技術が必要となりますので、手前醤油はかなり難しいようです。また日本酒や焼酎などのアルコール製品については、法律によって個人で製造することは禁止されています。
中島が入手したことのある麹のパッケージには甘酒の造り方が書いてありましたが、甘酒は素人でも簡単に1日あればできてしまうそうです。お砂糖はまったく使用しないのですが、優しい甘さで香ばしい甘酒はとても美味しいですよ。
味噌の方は甘酒より若干手間がかかるようですが、製造期間としては3ヶ月ぐらいから1年とのことです。手間がかかるといっても難しい工程があるわけではなく、気を使わなければならないのは分量の配分と温度管理ぐらいとのことです。麹が好きな温度は20度前後ということですので、キッチンなどの直射日光のあたらない屋内に置いて優しく扱ってあげれば良いようです。
前回の書込みで説明させていただいたように、味噌は麹・大豆・塩の分量と、熟成時の温度やかき混ぜる作業などで色も風味も大きく変わるとのことですので、いろいろと試してみてお好みの味噌を作ってみたり、名古屋名物八丁味噌など独特な味噌が作れるか実験してみても楽しいと思います(ただし大豆麹が必要です)。また、化学調味料も合成保存料も使用していない、まさに天然100%の味噌を作ることができるので、なによりも安心ですよね。
手前味噌(てまえみそ)という言葉があるように、自分で工夫して作った味噌の味は、誰もが自慢したくなるほど美味しいようです。インターネットを検索すると自家製味噌の作り方を紹介しているページもありますので、参考にしてみると良いと思います。
さて、下の画像ですが、これは前回掲載させていただいたマルちゃんの味噌煮込みうどんとは別のもので、別の愛知県出張時に発見した寿がきや(スガキヤ)食品さんの味噌煮込みうどんです(寿がきや食品さんは愛知県に本社がある食品メーカーです)。
愛知県ではいろいろなメーカー製の味噌煮込みうどんが売られているようです。さすがに味噌文化で名高い地方だけのことはありますね。
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