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食品とバイオテクノロジー (1)

2008年07月07日 食品とバイオテクノロジー (1)

月曜日担当の中島です。

前回までの書き込み(6月のアーカイブ)で、応用生物とバイオテクノロジーの関係やバイオに関する用語を説明してきました。今回からしばらくは、食品に関係するバイオテクノロジーを簡単に説明させていただきます。

「食品とバイオテクノロジー」 その(1)は、ぬか漬けです。

前回の書き込みバイオプリザベーション(biopreservation)について説明させていただきましたが、乳酸菌による発酵は食品に抗菌性(保存性)が加わるだけでなく、独特の旨味(うまみ:美味しさ)を加えてくれます。

キュウリや大根を美味しく食べるために、“漬ける”という加工方法があります。簡単な方法としては単に塩(もしくは塩水)や醤油に漬ける方法もありますが、日本古来からある代表的な“漬ける”方法に、ぬか漬けがあります。

ぬか漬けは、米糠(こめぬか)に塩水を加えて発酵させた糠床(ぬかどこ)にキュウリなどの野菜を漬け込んでつくります。米ぬかとはお米を精米(精白)するときに削り取ったお米の外側の部分や胚芽(はいが)のことで、実はとても栄養価が高いのです。この米ぬかを発酵させるのですが、この時の発酵が乳酸菌による発酵(乳酸発酵)なのです。
ただし、米ぬかに塩水を加えただけでは乳酸発酵はしません。乳酸発酵に必要な乳酸菌は野菜の表面などに付着していますので、ぬか床に野菜を漬け込むことで始めて乳酸発酵が始まるのです。ですから、最初は米ぬかに塩水を加えたものに野菜の皮や切れ端を漬けることで乳酸菌を植え込み、発酵させる作業を1週間ほど行います。

うまく乳酸発酵したぬか床に野菜を入れると、ぬか床と野菜の栄養分が旨味の成分(アミノ酸、エステルなど)に分解されて、独特の味や香りをもったぬか漬けができあがるのです。

以上のように、ぬか漬けは乳酸菌の働きを利用して保存性と独特の旨味を加えるバイオプリザベーション(biopreservation)なのですが、当然のこととして乳酸菌発酵を上手にさせるための温度管理や、適度に空気に触れさせる「かきまぜ」作業が必要になります。また、ぬか床の独特な香りを「ぬかみそ臭い」などといって、嫌がる人も少なくありません。
そこで、最近のバイオテクノロジーを利用して、温度管理やかき混ぜ作業など維持管理が簡単で、臭いの少ないぬか床なども研究されています。

古くから人々が培ってきた技術に最新のバイオテクノロジーが加わることで、今まで以上に人や地球に優しい技術やモノを造り出す、そんなことがぬか漬けでも行われているのですね。

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画像は日曜日に我が家の食卓を彩ったぬか漬けブラザーズです。
美味しかったです 


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