応用生物学科ブログ 個別記事

テクノロジーで社会を豊かにする。



八王子 2年制 ※八王子校のみ設置 中級バイオ技術者をめざす人のための学科情報ブログ 応用生物学科

オープンキャンパス・体験入学

花の色は〜

2008年07月10日 花の色は〜

 うーん、先週末あたりから突然「夏」になってきましたね。

今日は早くもニイニイゼミの死骸(あまりに生き急ぎ過ぎ…)を発見してしまいました。

 毎朝の通勤途中の道端に生えているツユクサスカイブルー

の花が咲き始めました。ここまで鮮明なブルーの花は少なく、友禅染

の下絵を描く時にもこの花の汁が使われます(ただし今では栽培種の)。

 さて、このツユクサの花の色。どのようにして青く見えているのか

を調べた人がいます。その結果、デルフィニジン系の

アントシアニンラボンマグネシウム

を中心に配位して複雑な複合体を形していることが

明らかになりました。

また同じように青い花であるヤグルマギクの色素の構造も

同じようにシアニジンアントシアニンフラボン

カルシウムマグネシウムと複合体を作っている

ことがわかってきました。

 単純に青い色素があれば

青くなるというわけではなかった

わけですね。まあ、このへんの詳しい話はJabionのコラム

http://www.bioportal.jp/columns/29/)あたりを参照にしてください。

 

 いくつかの企業などでデルフィニジン合成酵素を

導入した遺伝子組換え植物が作られていますが、

青い薔薇を作り出す戦略はそれだけではないということですね。

うまく複合体を作らせることができればデルフィニジンがなくても

青くなる可能性がある。では、どうやったら青い複合体を作り

出すことができるのか…

 

 実は・・・今朝見つけたツユクサにはあきらかに紫色の花

があったのです。通勤途中なので採ってくるわけにもいかなかったの

ですが、普通の青花とどう違うのかがわかれば青いバラを作る方法

が見えてくるかもしれません。一番最初にやらねばならないのはこの

紫花形質が後代に遺伝するかどうかを確認することですね。もし遺伝

するなら、そのツユクサの遺伝子のどこかが普通種と異なってい

るわけで、その遺伝子がなんだかわかれば青い花を作る大きなヒント

になるはず…。でもツユクサは午前中でしぼんでしまうので、

多数の個体が生えている中、もはやあの紫の花を再発見すること

はたぶん不可能です…

 

 

「無理してでも採ってくるべき

 

だった〜!!!

 

(後悔先に立たず)」

 

というわけで、次回はバイオと切っても切れない話、「遺伝」

についてお話しすることにします。

 

今日の一冊

 せっかく青いバラの話を書いたので、最相葉月さんの

「青いバラ」(新潮文庫)をお勧めしておきます。

 

 「絶対音感」でいきなりヒットを飛ばし、最近では

「星新一 一00一話を作った人」が書店で平積みとなっている

最相さんの2冊目のノンフィクションです。あちこちにちりばめられた

ミスターローズ、故鈴木省三氏の言葉は一つ一つに重みが

あります。様々な観点から「青いバラ」に迫り、育種家、サイエンティスト

はどんな人たちなのかが浮き彫りにされています。

バイオを志す人には必読です(バラ好きならもっと必読デス)

n-90811554 at 18:47 | この記事のURL | |