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白いネコはなぜ白い?

2008年08月07日 白いネコはなぜ白い?

さてさて、今日はネコの遺伝についてでした(何度も言いますが野崎の専門は植物)

と言っても正確にはネコの毛色の遺伝について、です。

その前に「メンデルの法則」についておさらいをしておきましょう。応用生物学というかバイオテクノロジーの基礎となる理論です。

メンデルの法則は以下の3つの法則から成り立ちます。

(1)優性の法則:劣性遺伝子が優性遺伝子の影響で発現しないこと。

 このため、親の形質のうち、優性の形質のみが

 子に現れる。

(2)分離の法則:(1)に従って生まれた第1世代同士を交配させること  

        によって、第1世代では表れなかった劣性の形質が 

        第2世代に現れること。

(3)独立の法則:(1)、(2)に従う遺伝子の他にも、形質に関わる遺伝

        子が存在する場合、遺伝子はそれぞれ独立し、

        子に受け継がれること。

ここで重要になってくるのがゲノムと倍数性の概念ですが、ここでは「ほとんどの生き物は生存に必要な遺伝子を2セット持っている」と考えましょう。で、子供はそのうちの1セットずつを両親からもらって2セット持つことになります。

 

前回のアルビノを例にすると、アルビノチロシナーゼ遺伝子が壊れているのでメラニンが合成できない個体でしたね。ということはアルビノと野生型(アルビノ遺伝子を持たないとしましょう)の子供はアルビノの親から壊れたチロシナーゼ遺伝子入りセットをもらい、野生型の親から正常チロシナーゼ遺伝子入りセットをもらうことになります。この場合、子供はちゃんと働くチロシナーゼを一つは持っているので、メラニンが合成されます。つまり、アルビノは劣性変異ということです。

 

さて、ここでやっとネコちゃん登場です。白ネコはたくさんいますがアルビノを見た人はほとんどいないでしょう。ほとんどの白ネコは白化個体ということですね。この遺伝子はWと表記される優性遺伝子で、対立遺伝子は全ての有色遺伝子になります。毛が白いということはメラニンがないということですが、もしメラニン合成ができなくなるような壊れた遺伝子を持っているようなら、アルビノと同様に劣性形質のはずです。どういうことなのでしょう?

 

実は白ネコにはメラニンを合成できる細胞(メラノサイト)が無ようです。同じように優性変異には白斑(S)もあるのですが(白相手だと劣性)、この白斑もメラノサイトが無いために白くなっています。メラノサイトは胎児期に増殖と移動をし、全身の皮膚に分布するようになるわけですが、この増殖と移動を指示するシステムに異常が起きているのがこれらの変異です。マウスの同様な変異では指示を受ける「レセプター」と呼ばれるタンパク質に異常が起こっていることが知られています。このレセプターは2個がくっついて働くのですが、異常タンパク質どうしでくっつくだけでなく、正常タンパク質と異常タンパク質がくっついても働かないために、両方の遺伝子をヘテロで持つと正常な組み合わせのレセプターが4分の1になってしまい、増殖と移動を指示するには数が足りなくなると説明されています。おそらく、ネコでも同様のシステムが働いていると考えられます。

 

 というわけで、Wを持つネコはメラノサイトが移動できず、皮膚中に無いので白くなるということになります。Sを持つネコは(Wを持たない限り)メラノサイトが途中までしか移動せず、白い部分ができる事になります(ホモのほうが白い部分が大きくなる)。つまり、これらの遺伝子が他の毛色遺伝子よりも優性(というか上位)にある理由は、他の毛色遺伝子はメラノサイトで働く遺伝子なのにWSはそのメラノサイト自体を無くしてしまうから、ということです。

 

ところで、メラノサイトは神経冠細胞という細胞由来なので、白や斑の変異個体は同じ神経冠細胞由来の組織に異常を持つ事があります。白ネコの場合には目がブルーになるとか難聴になるケースもあります。

 

ネコの遺伝の話は尽きないのですが、長くなるので次回に。次回は「ccはどうして三毛ネコじゃなかったのか?」ライオニゼーションについてです。

 

今日の一冊

ネコと遺伝学 (新コロナシリーズ): 仁川 純一

ネコの遺伝ということなので、これで。ホントはネコの毛並み毛色多型と分布 (ポピュラー・サイエンス)のほうが好みなんだが・・・でも既に入手困難なので。

最近はこの手の情報はネット上で充実しているので、あえて本を読む必要はないという人もいるかもしれませんが、ネット情報は実用上の情報に限定されるケースが多いこと、孫引きを繰り返して解釈がおかしいケースも多いことなどの問題もあるので(コピペ作成レポートがダメな理由)、できるかぎり信頼の置ける出版物(1次情報に相当するもの)は読んでおくべきです。もちろん出版物自体が2次情報という場合もありますが、それでも3次情報よりはノイズが少ないはずです。特にどうしても必要な情報を探す場合には1次情報を探し出して当たるようにしましょう。

 

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