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カビ・酵母・細菌のお話し (3)

2008年10月27日 カビ・酵母・細菌のお話し (3)

月曜日担当の中島です。

前回、この「カビ・酵母・細菌のお話し」というタイトルで書き込んでから、ちょっと間隔が開いてしまいました。

このシリーズの(1)と(2)では、カビ・酵母・細菌の大きさの違いを簡単に説明し、それからカビについての説明に入り、アオカビ、クロカビ、シロカビまで説明させていただいたところでした。カビについても、まだ説明させていただきたいことがありますし、酵母・細菌についても簡単には説明しつくせるとは思えませんので、「食品とバイオテクノロジー」のシリーズからちょっとだけ脱線して説明させていただくつもりだったのですが、結構長編シリーズになってしまいそうです。
前回・前々回の内容をご覧になりたい方は、下のリンクをクリックしてみてください。

カビ・酵母・細菌のお話し (1)

カビ・酵母・細菌のお話し (2)

さて、アオカビ、クロカビ、シロカビと説明をご覧になったところで、何て迷惑なヤツなんだ! と思った方もいるのではないでしょうか?
しかし、カビは約5億年ほど前の化石からも発見されているそうです。それに対して人間(その起源である猿人)が地球上に現れたのが600万〜700万年ほど前といわれていますので、もしかしたらカビにとって人間のほうが迷惑なヤツなのかもしれません。

カビは胞子を放出しますが、その胞子は成層圏と呼ばれる上空1万メートル以上にまで浮遊していき、上空の強烈な風を受けて何100キロも飛散していくことが知られています。また、地球上にカビが何種類存在するのかはまだ分かっていませんが、少なく見積もっても3万種類以上、研究が進めば10万種類以上にも分類されるという説もあるぐらいです。

以上のような状況ですので、カビを迷惑なヤツ!と思っても駆逐することは絶対に不可能ですので、カビの性質を知って上手に付き合っていく、上手に利用していった方が良いのです。
食品加工における麹(コウジ)の利用については今までも触れてきましたが、今回は医薬品における応用例を説明させていただきます。

カビから発見された医薬品として最も有名なのは、ペニシリンではないかと思います。ペニシリンはフレミング(イギリス)という科学者が化膿菌の研究中に、アオカビが細胞壁の合成を阻害し化膿菌が増殖できないようにする性質を持っていることを発見(1920年)したことから、抗菌剤としての効果を期待して研究開発されたものです。発見から実用まで10年以上の歳月が必要となりましたが、第二次世界大戦中は多くの負傷者を感染症から救っていますし、また、肺炎の特効薬としても現在まで多くの人命を救っています。
なお、ペニシリンという名前は、アオカビの学名であるペニシリウムにちなんで付けられています。

もうひとつカビから発見された有名な医薬品としては、スロレプトマイシンがあります。ストレプトマイシンはワックスマン(アメリカ)という科学者が、ストレプトミセスというカビから発見したもので、結核の特効薬として利用されています。

この他にも、テトラサイクリンという、やはり抗菌作用を示す物質も発見されて、抗生物質として利用されています。ペニシリンストレプトマイシンテトラサイクリンなどの例からも明らかなように、カビは人類にとって実は命の恩人であり、迷惑なヤツという面だけではないのです。

それでは、本日の画像です。   
今回もカビの画像というわけにはいかないので、キャンパスの撮影画像です。

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左は先週の金曜日に撮影した、雨と霧で霞んでみえる片柳研究所棟です。今年の秋はこういった天候が多くて、イヤですね。
右は先週の書込みに添付した、画像と同じイチョウ並木です。このイチョウ並木は周囲を石畳に囲まれているせいか、キャンパス内で最初に色づいてきます。すでに木の周りは、黄色いジュウタンが敷き詰められていますね。キャンパス内の他のイチョウ並木もあと1〜2週間で黄色く色づくのですが、有名な神宮外苑のイチョウ並木の見頃は12月中旬ですので、八王子キャンパスの方が都心より1ヶ月も秋が早く来ていることになります。

ちなみに、中島は寒いの大っ嫌いです  


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